第6回目。
今回は『ふるさと』発売から7月の末まで。
娘。たちへの試練がピークとなった時期のこと。
カオリファンにはちょっと厳しいなあという内容もあるけど、なにとぞ御理解のほどを。


ふるさと×LOVEマシーン×ハピサマ 考察(1)
ふるさと×LOVEマシーン×ハピサマ 考察(2)
ふるさと×LOVEマシーン×ハピサマ 考察(3)
ふるさと×LOVEマシーン×ハピサマ 考察(4)
ふるさと×LOVEマシーン×ハピサマ 考察(5)
の続き。



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1999年7月14日。『ふるさと』の発売日である。同日発売のシングルは前々回のリリース表を見てもらうとして、ここで気にとめておきたいのはダンス☆マンがアルバム『MIRRORBALLISM 2』をこの日リリースしたことである。

つんくは自分でCDを買いに行かずに、雑誌を見て適当に「これとこれ買ってきて」と人に頼むらしいが、7月14日発売のCDを頼んだ時にこのダンス☆マンのアルバムが引っかかった。買ってきてもらったCDを聴き「これはおもしろい」と気に入り、急遽スタッフにダンス☆マンのことを調べてもらったのが『LOVEマシーン』でダンス☆マンが編曲することになったきっかけである。その後つんくの要請を受けたレコーディングディレクターの橋本慎氏がダンス☆マンに会いに行って編曲参加が確定した。

15日。この日もASAYANの収録。この日は『ふるさと』のプロモーションと共に3期オーディションの続報が入ってきた回だった。オーディションのことについてはまた後に詳しく書くが、つんくの発言にはすでに合格者を想定していた節があった。カオリは相変わらずで、この日になってもなっちへの対抗心を隠そうとはしていなかった。この時期のカオリの言動を調べていると疲れてきてしまうのだが、娘。内でもメンバーたちのなっちへの気持ちがいくぶん和らいだため、逆にカオリの言動を煙たく感じているような雰囲気も出てきてしまっていた。

16日。『ふるさと』で一度きりの『ミュージックステーション』への出演である。この日の共演者は鈴木あみ・浜崎あゆみ・Dir en greyと同日発売のアーティストでいっぱいだった。縁浅からぬスガシカオもこの日共演している。トークはバリ島に行った時の思い出話で紗耶香の「三段腹」話やなっちと紗耶香の「スモールニョニョ」話で、特に同期対決に触れることはなかった。また、この日の番組内のランキングで『ふるさと』が4位ということが発表され、鈴木あみにも浜崎あゆみにも負けたことがメンバーたちには分かった。そんな中でもこの日の娘。たちの歌のパフォーマンスは良かったように思う。セットは星空を意識して作られたもので、まるでなっち卒業時の横浜アリーナの星空の様な中でモーニング娘。たちは切なそうに歌っていた。

そして、ミュージックステーションを終えた娘。たちの元に一本の凶報が入る。以前『太陽娘と海』や映画『モーニング刑事』で共演したこともあるカントリー娘。・柳原尋美さんの事故死であった。精神的につらい日々を送っていたモーニング娘。であったからマネージャーがわざとこの日は伝えなかった可能性もある。が、それはすぐに知れるところであり、平家のみっちゃんと共に最古のハロー(という名前すら生まれる前)の一人だった尋美さんを失ったことは娘。たちにとって計りしれぬダメージとなっただろう。

19日はNHK『ポップジャム』の収録。この日は娘。たちが『ふるさと』を歌ったあとのトークにポケットビスケッツが参加。千秋が『ふるさと』に対して「いいうた」とコメントしている。また内村とウド鈴木が『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』のネタの「モーニング息子。」を披露。このあたり何かしらの連係があったのだろうなと感じられる。


ついにオリコンの順位が出る20日。順位が出る前の一部メンバーたちの気持ちをちょっと振り返っておく。

紗耶香
「モーニング娘。ってこういう歌も歌えるんだよって部分も分かってほしい」

圭ちゃん
「あみちゃんとモーニング娘。、どっちが売れてるのかなっていう…そういう気持ちではなくて、娘。の歌をどれぐらいたくさんの人に聴いてもらえてるかなっていうのが心配です。」

彩っぺ
「(鈴木あみと)曲調とか違うから、どーんと売れなくても長く売れてくれればいいなっていうのが本音なんですけど…」

姐さん
「あみちゃんと比べて結果がどうとかっていうのも気になりますけど、自分達が今まで出してきた曲の中での順位というのはやっぱり残ってるから、それに対して今回はどうとか、良かった悪かったっていうのはすごく気になります」

ASAYANの中ではモーニング娘。が鈴木あみに対抗意識を燃やしていたことになっているが、実際の娘。たちはそうでもなかった。当時の娘。たちは「明日香が抜けたことによってパワーダウンしたと言われたくない」と意識していたし、「売れなければ解散」ということもちゃんと分かっていた。相手がどうこうではなく「自分たちがどうあるべきか」ということを、追い込まれた状況になって一部のメンバーたちは再度考え始めていたのである。


そして発表。
その日の発表で娘。たちは負けた。鈴木あみに負け、ASAYANに負け、自分たちにも負けたのだった。『ミュージックステーション』で4位だったので、もしや3位くらいまでは希望を持っていたのかもしれないが、結果はそれよりも悪かった。

しかし順位は5位でも10万2700枚売り上げ、これはもし前週七夕の日に発売していれば3位の数字だった。PVすら完成していない状態でのプロモーション活動や、たった2週間後に発売されるアルバムからのシングルカットということを考えれば、よく売れた方だと言ってもいいだろう。ましてや売れ線ではないスローテンポの純朴な歌である。

結果が出る中で、メンバーたちは「負けた」ことよりも、モーニング娘。に勢いがなくなっていることがはっきりと分かったことが重要だった。姐さんの発言を拾ってみよう。

「今回は、あみちゃんと、同日発売でっていうので、競争っていう形になって、こういう結果が出たんですけど、あたしはそういう結果よりも…あみちゃんに負けたというよりも、自分たちが出した今回の結果にすごく悔しいなって。だからまさに今、モーニング娘。の現状が危ない状態にあるんだなっていうのは、前から感じてたけどここで明確になってきたんで。だから次、自分達で納得できる結果を出すために何をやっていけばいいか。どうやっていけばいいか…」

この順位発表のあとメンバーたちはその日ダンスレッスンをしていたスタジオで、討論をすることになった。ASAYANでのナレーションでは「しかし、その話し合いは今後についてではなく、この日行われていたダンスレッスンに関することだけに終始してしまったのです」と入れられてしまっていたが、内容はそうではなかった。メンバー間で抱えていた根本的な問題にもかなり突っ込んでこの時に話されている。

映像がない方にあらかじめ注釈を入れておくと、話はなっちが他のメンバーにダンスの注意している姿が気に入らなかったカオリが、遠回しにそのことを責めることから始まっているらしい。以下ASAYANより書き起こし。(分かりやすくするために、若干整理済)


飯田「ま、カオリ的には――なんつうんだろう、カオリは結構もう、自分ひとりで考えたいタイプだから、人に『ああしろ』『こうしろ』って言われて、『あ、そっかあ』って思うけど、でも、やっぱ自分の中の考えもあるから、そういうので変えられたくないから――」
中澤「でもなあ? カオリの、その――カオリは、人に、いろいろ言われて、言われたくないから、自分の考えを変えたくないって――そんなのみんなそうやで」
飯田「あっ、それはわかるよ」
中澤「だけど、あたしらはグループでやってるから――」
飯田「そ……カオリは、そういうことは言ってない。今裕ちゃんが、考えてることは言ってない。だけど、もうちょっと、なんつうの、自分の意志も大事でしょ? 流されちゃうよりも、自分ひとりひとりが頑張っていかなきゃいけないことだから」
中澤「なんで注意されることが流されることなの?」
飯田「ま、そういうわけじゃないけど、でも、今日彩っぺも言われてたけど、『なっちのことよりも先にしなさい」って――」
中澤「ああ『自分のことを先しなさい』ってな。」
飯田「『他人のことをやるよりも、自分のことをちゃんとしなさい』って。それはカオリ、もっともだなあと思うのね」
中澤「うん、それはそうや」
飯田「それを、言いたかったの」
保田「だけどさあ、みんな完璧な人なんていないからさあ――」
飯田「あっ、それはわかるよ」
保田「それをさあ、全部(出来ることを)待ってたらやっぱり、誰も注意できなくなるわけじゃん」
飯田「注意するなとは言ってないって、カオリ」
保田「うん。だから――」
安倍「でもさあ、注意し合えるほうが、いいと思わない?」
保田「うん、そう思う」
飯田「でも、それ、注意は、していいと思うよ。思うけど――」
安倍「だから自分が――」
飯田「もうちょっとなんつうんだろう、広い心で、注意したほうがいいと思うの」
中澤「だから結局あたしらが今話してることは、明日香が辞める前に話をしてたこととなんにも変わってないわけよ。そっから何も進んでないってことやんか、今言ってることって。多少意見は言えるようになってるし、あたしも『ここはああなんじゃない?』とか『どうやってやんの?』って聞けるようになってるし、言ってもらえるようになってるからいいけど、今こういうことで話し合ってること自体もう、全然よくなってないやん? 『広い心で』って、だってカオリ、前からそれ言ってるやん」
飯田「どういうこと?」
中澤「『みんな広い心を持とう』って。カオリが言ってることは、何ヶ月も前に、言ってたことと一緒やんか。それを言わせてるということは、状況は変わってないってことやから――
安倍「他人の意見っていうか、言ってくれたことを聞き入れて、それで自分の考えを、ちゃんと考えて探して…ダンスじゃなくても、他のことでもそうだと思うんだよね。聞き入れて、そういうふうに考えて出すのが、なっちいいと思うんだ」
石黒「…なんか、この辺で(話が)立ち止まってんのはおかしいかなあと思うんだけど」
安倍「なんかさあ、ほんとに大事なことっていうか、なっちもほんとにまだまだ出来てないけどさあ、ちょっとしたことだよほんとに。なんか、『ダンスのここが違ったんじゃないかなあ』とかさ、『あれってああだったっけ』っていうことは、ほんとに、注意しあってさ、刺激しあって、上がっていくのはいいことだと思うから――」
石黒「そう、あたしなんか今日すごいなっちがすごい言ってくれるでしょ。そばでダンスやってて――」
安倍「『こうじゃない?』って。」
石黒「『こうじゃない?』ってすっごいいっぱい言ってくれるでしょ。あたしすっごいうれしかったんだ。ていうかなんかやっぱり自分で、失敗したとこって気づくんだけど、なんとなく、やっぱ自分にはちょっと甘いのね。で、間違ったのを分かってることになんか納得しようとすんのよ。それをあたしは、外から何か言われることで、『ああ、そうだよなあ。どう考えても人から見て間違ってんだったら、大勢に見せるもんじゃない』と思って、あたしはなっちに言われて、『あ、やんなきゃ!』とすっごい思ったんだ。だからあたしにとって、みんなから言われたことが、今日よかったから、だからあたしはなんでも言ってほしいなって今日すっごい思ったんだ」

矢口「あんまり解決しないんじゃない?」
飯田「うん、話して解決はしないよ」
安倍「それはそうだよ。だけどさあ――」
中澤「話して解決しないけど、何ヶ月か前に、話して、じゃあ、今日まで成長してきたか? やってきたか?」
矢口「いや、でも注意できなかった部分……裕ちゃんとかも、やっぱり、最初は注意したら機嫌悪くなるのかなっていうのがあって、うちら3人とかも、注意できなかった部分はあったけど――」
中澤「うん、(今は)言ってくれるよね」
矢口「話し合いをして、注意できるようになったし、圭織とかも、なんか、そうやって言ってるけど、なんか、うちらも注意できるようになったというか、そういう部分では……なんだろう――」
中澤「じゃ後は、聞き入れる側の問題ってことやな。言えるようになってるんやから、言われたことを、どう解釈するか? 『わかってるのに』と思うか、『あ、そうなんや』と思うか――」
矢口「こっちも悪気があって言ってるわけじゃないから――」


以上がASAYANで流されたメンバー討論だ。先に断っておくがASAYANで流された討論はほんの一部に過ぎない(3時間に及んだらしいので)。

この日の『ふるさと』敗北での討論で、なっちに鉾先がいくかと思いきや、そうはならずカオリが話題の中心となってしまっていた。さすがに姐さんも彩っぺもカオリへの苛立ちは隠せなくなってきていた。人のことは散々言い散らして自分ことを言われると耳を貸さないカオリに、姐さんや彩っぺが苦労して諭している様子がよく分かる。どう考えても姐さんの「聞き入れる側の問題」というのは、聞き入れない人に「広い心」を持ちなさいと言ってるようにしか聞こえなかった。

姐さんと彩っぺはなっちとカオリに対しては中立でいたかっただろうから、今まで二人の関係に対して口を出してこなかった。カオリには「なっちのことを必要以上に意識するな」、なっちには「カオリから言われても気にするな」くらいは言っていたのかもしれないが、なるたけなら深くかかわりたくない問題だっただろう。

しかしこの日、『ふるさと』の結果が出たことによって、「こんなことじゃいけない」「モーニング娘。にとって今すべきことは何なのか」ということが分かったのだ。カオリには「なっちの肩をもっている」と思われるのを承知で、娘。内での切磋琢磨と話し合いを阻害しているのはカオリだということを分かってもらいたかったのだ。

明日香は辞める時に「メンバー内で話し合っていかなきゃダメだよ」「競い合ってほしい」と言い残して去っていった。Memory青春の光ツアーのときに(メンバーたちが思う)素晴らしいコンサートが出来たのも、ツアー中によく話し合っていたからだった。あれから進歩することなく「明日香が辞める前に話をしてたこととなんにも変わってない」と姐さんは思っていた。だからこそ変わらなきゃダメだと思い、「モーニング娘。の現状が危ない状態にある」から、カオリに嫌われることを承知できついことを言ったのである。

カオリはこの時のことをどう思っていたのだろうか。ちょうどその頃に書いた連載「パラノイアダイアリー」がある。

「おいしいオレンジジュースが欲しい日」
○月×日、きょう考え込んだ。 最近ずっと考え事をしている。 本当にもう少しで18歳になっていいのか…18歳といえば車の免許がとれたりパチンコができたり今までできなかった事ができるようになる。 今よりも自由になる。 昔は学校や親に縛られる生活が嫌で大人=自由だと思っていたから、誕生日が来て1つ年をとるだけで大人になった気がしてうれしかったけど、今は年をとるのが怖い。いろんな人と接して大人とは年ではなく中身だと知ったから夢ばかり見ている自分が現実を知らされた気がしてすごく怖い。大人はつぶつぶオレンジジュース。 大人はたくさん経験して優しさや厳しさを持って言う。大人の心にあるたくさんのおいしい人生の果実がみんなに好かれる。 子どものかおりはすっぱい誰からも好かれないオレンジジュース。
最近嫌な事があって何事も嫌になっていた時、年上の人が心配してくれて相談したら“自分の感情を表に出すな”と注意された。その人はいつも元気そうに見えるから悩み事なんてないと思っていたけど、かおりよりも深刻な悩みをたくさん持っていた。全然気づかなかった。大人だと思った。その人がみんなに信頼されている理由を納得したあと客観的に自分を見たら、やっぱり自分の事しか考えてない誰からも好まれないまずいオレンジジュースみたいだった。
昔から“自分勝手”と陰口を言われる理由がこの事だと気がついてまた落ち込んだけど、また同じ事のくり返しだとも気がついた。世の中にはいろんな人がいるけど心の果実が腐ってしまった大人にはなりたくない。ゆっくり時間をかけていろんな経験をして果実を増やし大切にしていこうと強く決心した。時間は誰にも止められないし1日はあっという間に過ぎてゆくけど、自分に意味のある時間をどう過ごすか心のオレンジジュースがおいしくなるかは自分次第。生まれて初めての難しい課題ができたけどもう何も怖くない。誕生日が来るのも怖くない。かおりの心はおいしいオレンジジュースになれるから。


「心のオレンジジュースがおいしくなるかは自分次第」と書いているところが甚だ疑問であり、確かにちっともカオリの言動は改まらなかったが、彩っぺ卒業を経ると徐々に自我を押さえ込めるようになっていく。また、ロボットダンスがちっとも治らなかったところを見ると、ダンスレッスンで注意されるのは最後まで嫌いだったんだろうなと思う。しかしそれはもう時が経つにつれて「カオリらしさ」を作っていっていたから構わないだろう。

この時期のカオリはグループ行動という点では非常に場をかき回す存在であったが、芸能界的にみればその存在は貴重だった。『うたばん』に頻繁に出れたのもカオリがいればこそだし、ASAYANでも鈴木あみに対する感情むき出しでコメントする姿は、演出上非常に重宝した。それが視聴率にも貢献してたのは確かで、メンバーのことを思えばやりづらいカオリの存在だったが、テレビ的には得難いキャラクターだったのも確かである。しかしそれによってカオリから徐々に人の心が遠ざかっていき、孤独な99年後半となってしまったことは残念だった。なっちとカオリの対立はモーニング娘。には苦悩しかもたらさなかったが、しかしそれは後の旧メンバーたちの結束力を作り上げた要因でもあり、モーニング娘。史において貴重な時代である。なっちとカオリの対立を含め、この時の苦難がなければモーニング娘。の再ブレイクはなかったのだ。


さて、この『ふるさと』での失敗についてだが、和田さんは「痛い目を見るのもいい」と思っていたから、あえてプロモーション不足の説明はメンバーたちにしなかった。なにも和田さんはメンバーが憎くてそうしたわけではない。「Never Forget×Memory 青春の光 再考」に載せた和田さんからメンバーへの手紙のことを思い出してみよう。

「この芸能界はとても厳しい世界だと僕は思います。一枚のシングルを出したきり二度と出せない人。最初はチカラをいれてもらっていたのに売れないと途中から全然チカラをいれてもらえなくなる人、決してすべてがアーティストの責任でもないのに、一番アーティストが責任をかぶります。そんな厳しい世界に君たちを引き込んだ一人として、常日頃責任感を感じています。時たま君たちに厳しい言葉を吐いたりもしますが、それも君たちに対する責任感のあらわれだと思って許してください。」

和田さんは責任所在がどこにあろうとも「一番アーティストが責任をかぶる」ということをメンバーたちに分からせたかったのだ。しかしそうは言っても責任をなすりつけることはしていない。失敗を予期していた和田さんは、早くも動き出していた。次のシングル、新しいメンバー、新しいユニット…着々と手を打っていくこととなる。この時期に和田さんが勝負に出たのもまた『ふるさと』の失敗があればこそであった。

そんな中の7月28日、アルバムのプロモーションも兼ねて「7人最後のモーニング娘。」と銘打ったラジオ『ANN.com』にパーソナリティとして出演する。和田さんも横で聞いている中でのラジオ放送だった。(紗耶香は年齢の都合上、電話出演という形)

この番組は合間合間にメンバーたちが「私達はおもちゃじゃない」と叫び訴えていて、これはデビュー当時の横浜アリーナの「叫び」と同じく、おそらく和田さんが言わせたものなのだろう。また、かなり突っ込んだ内容にも踏み込んでおり、当時のメンバーたちが芸能活動に対してどう思っていたかよく知ることができた。
ASAYANで放送された討論から数日が経っており、若干メンバー間の関係が再構築されたせいもあって、『ふるさと』のことについてリスナーから質問が来ても、なっちは「自分一人のせいではない」と言い切ることが出来ていたし、他のメンバーも「なっちのせいではない」と言い切ることが出来ていた(一人を除いて)。

矢口「『私は26歳の主婦です。ASAYANで私と一つしか歳の違わない中澤さんが夢に向かって頑張っている姿を見てモーニング娘。のファンになりました。私の希望としてはモーニング娘。はアイドル路線に走ってもらいたくなかったんだけど…特に石黒さんや中澤さんにはロックを歌ってもらいたいなあ。最近モーニング娘。を見ていて思うこと。みんなホントに好きな歌を歌っていますか? みんなほんとにやりたいことをやっていますか? なんだかメンバーを増やすだとか、ランキングのこととか、誰がメインをとるとかばっかり気にしてて、すごく窮屈そうに見えてしまうのは私だけでしょうか? みんな歌がうまいし、個性的なんだから大丈夫。今のしかかっている重荷みたいなものがふわっと浮いたとき、もっと素敵なグループになるんじゃないかな。これからも応援するからみなさんも頑張ってください。それでは』こういうお便りなんですけど」
中澤「私、今回の意見の中で一番痛いとこつかれた」
飯田「好きな歌を歌ってることはね、すごく幸せなことだけどさ、でも歌うためにいろんな努力をしなきゃいけないじゃん。その努力はさ楽しいばかりじゃなくてつらいこともあるわけじゃん? やっぱつらいことをやってるときはさ、不安に陥る時はある」
安倍「いろんな壁とか与えられるじゃん? それはでもさスタッフとか回りの大人の人たちがモーニング娘。一人一人のことを考えてやってくれてることで、うちらもすごい悩んだり考えたりするけど、やっぱりそういうのがなくちゃさあ、自分のしたいことだけしてっても絶対成長しないと思うしさ。なんか楽ばっかりしててもさ…」
保田「窮屈だなって思う部分と、ここは歌わしてもらえて幸せだなって思える両方があるからやっていられると思う」
矢口「歌を好きって気持ちはみんな同じことじゃん。だからこういうお仕事をしてる上で、歌を好きであればいろんなことを乗り越えていけるって感じがする」
中澤「私はね…『アイドルになってほしくなかった』だっけ?……別に私たちはアイドルをやっているつもりはない。そういうふうに呼ばれてることに対してイヤな思いもしていない。だからアイドルって呼ぶ人がいれば、そう呼ばない人もいると思うんだけども…私たちが目指してるのは<アーティスト>でしょ?」
一同「うん」
中澤「だから、○○さん、私たちはアーティストを目指しているから大丈夫です」


このあたりのラジオで話している内容が、歌に対するメンバーたちの姿勢をよく表していた。そして『ふるさと』での挫折にめげず、徐々にメンバーたちが立ち上がろうとしていることが分かる。歌に対する思いというものも、もう一度メンバーたちは考え直していた。番組のラスト間近には今後に向けた決意もそれぞれ発表している。


安倍「これからもいろんな試練とか乗り越えなきゃいけない壁やハードルとか出てくると思うんですけど、自分というものをしっかり持っていろんなことに対して勝っていける強い力を日々努力してつけていけたらいいなと思っています。頑張るぞ」

飯田「正々堂々ぶつかる。カオリはね昔から…女の子ってグループとかあるじゃん? そういう人が悪口とか言ってると、こっちのグループで『あの人たち悪口言ってんのやだねー』とか言うんじゃなくて、悪口言うなら正々堂々言いなよーみたいな、そういうタイプなの。そいでまあ、カオリはそれでいいと思うんだ。この先つらいことがあって逃げ出したりしたいこともあると思うんだけど、それに逃げないで正々堂々とぶつかっていきたいの、何事に対しても。だから人に対してもそうだし、夢に向かってもそうだし、何に向かっても正々堂々とぶつかって素直な人間でいたいです」

石黒「私はすごい弱い所があって、すぐ逃げたくなっちゃうんですよ。だから人のこととかも、仲のいいコとかいても『こんなこと言ったら嫌われちゃうんじゃないか』とかそういうことばっかり考えて、後先を考え過ぎて失敗しちゃうんで…いろんなことを考え過ぎないでチャレンジしてくってことが私には大切だと思います。だからこれからはみんなにぶつかっていって、何があってもうちら7人の心の中は繋がっているから、みんなでいっぱい討論して、もっと私は自分を磨きたいです」

保田「今までけっこう尻込みするところが私にはあったので、これからはもっともっと自分を伸ばしてって負けない。自分自身でいろんなことに、自分に対して葛藤していきたいなと思ってます」

矢口「矢口はしょっちゅう悔し泣きするんで、この悔し泣きをなくしたいと思います。そしていつまでも自分らしく汚れない大人になりたいです」

市井「何回もラジオとかで言ってるんだけど…ビッグになりたいってことかな、やっぱり」

中澤「私はモーニング娘。に誇りを持っています。ホントに私たちはおもちゃじゃない。人生悔いなく生きます」


みんなそれぞれ気になっていることを言っていたが、注目は彩っぺだ。彩っぺのこの決意こそ『LOVEマシーン』でのはっちゃけぶりに繋がったのであり、また、カオリが孤独から救われてタンポポが特別なものになっていくきっかけになったものだった。そのカオリはまだまだで、彩っぺが本気でぶつかってくるまでは、勘違いした正々堂々さが続いてしまう。それでも、メンバーたちはこのラジオで本音を言い合って徐々に理解を深めあった。一ヶ月前のバリ島に行く直前と比べれば、メンバーたちの気持ちはかなり前を向くようになっていたのである。

そんな状態のメンバーたちに一つのレコーディングが待っていた。おそらく7月30日・31日頃、メンバーたちは今までにない形式でレコーディングに臨むこととなる。今までのように一人一人でもなく、誰がメイン誰がコーラスということもなく、メンバー全員で一本のマイクを囲んでレコーディングを行ったのだ。

『21世紀』

後藤が加入する前の7人での最後のレコーディングである。一つのマイクの前に立ち、みんなで息を合わせ手拍子をしユニゾンで歌う。つんくは「今までやりたかったんだけど、できなかった。やっとできるようになった」と言っていた。それが「メンバーの関係がこの形で歌うのに相応しくなかった」と言いたかったのか、それとも「自分の意見が通らなかったかったから出来なかった」のか「こういう形で歌うのに相応しい曲がなかなか作れなかった」のか、その辺は分からないが、『ふるさと』前の完全にバラバラなままの気持ちだったらこの歌を歌うことはなかっただろう。モーニング娘。に対して気持ちが一つの方向に向いてきたからこの曲を歌うことになったのである。また、カオリですら「この曲を全員で歌っている時、このメンバーで21世紀を迎えられたらいいね!っていう気持ちになったんです」と言っているように、この曲を歌ってより結束が強まった感があった。タイミングとしてはベストな時期に、この切なく夕暮れ感漂う『21世紀』はレコーディングされたのである。記憶が確かならばこの形式でレコーディングしたのは『21世紀』と『でっかい宇宙に愛がある』だけのはずだ。どちらも組織改革前の夏の頃のレコーディングだった…


その後娘。たちは再び北海道に行き、傷心のりんねと会い、加入してきた後藤と会い、そして『LOVEマシーン』でのブレイクに突入していく。
99年後半の大躍進は『ふるさと』の敗北から始まったと言ってもいい。このときのモーニング娘。・つんく・和田さん・ASAYAN、その他関係者多くの挫折がこの後のエネルギーとなっていくのだ。それは「爽快」と言えるほどのサクセスストーリーであったが、逆に再び娘。たちに苦悩をもたらすことにも繋がっていった。

最後に『21世紀』のメンバーたちの夢を振り返って終わりにしよう。(後藤は別録りなので割愛)

中澤「私の夢は、幸せになること」
市井「私の夢は、ビッグになってやる」
飯田「私の夢、きれいな言葉を持った大人になること」
保田「私の夢は、思いを伝えること」
矢口「私の夢は、笑いの絶えない生活」
石黒「私の夢は、巨乳になること」
安倍「私の夢、それは強くなること」

『ふるさと』の後にメンバーたちが話し合ったが、『21世紀』で語った自らの夢とそれとが結びついてくることが分かる。彩っぺはすでにこの時点で「辞めること」ことを意識していたのだろうし、矢口は気遣いばかりする生活に疲れているとも言えるだろう。それぞれのメンバーが『ふるさと』からどう立ち直るか、それが『21世紀』の夢に込められていた思いだった。そしてこの『21世紀』は娘。たちがブレイクするにしたがって封印されていくことなる…







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今回はここまで。
ようやく7月末まで終わり『ふるさと』については一段落。
次回はちょっと時間を遡って、オーディションのことを振り返る予定。

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